ガンボを食べる

もう今日は満月だ、あの”チキンガンボ”を食べたパーティーの空には細い月だったな。 4階建ての古いアパートの屋上からは、そこが山手に建っている具合で芦屋の街から大阪のビルの灯りまで見渡せた。
「俺たちのルーツはアフリカなんかじゃなくて、奴隷船の船底なんだ。そこが俺たちの世界のはじまりなんだ。」 そんな言葉だったかな、カリブ海出身のグリッサンという人が宣言したのは。 
もちろんそんなことを思い出すのは暗くて見えないチキンガンボの皿をまさぐっているからだ。 「ガンボ」はアメリカ南部ルイジアナ、流れてきたフランス人たちがフライパンでルーを炒め、スペイン人がタマネギをきざみ、そこに奴隷として連れて来られてアフリカン、ネイティブアメリカンのリズムも煮込まれ、トマトがつぶされ、スパイスが挽かれ、、、、ガンボ。 ルーツは入植船であれ奴隷船であれ海賊船であれ、みんな絶望と希望と混乱の船底にあるんだ、みんなそこから始まったんだ。