ノーザンライツ

また星野道夫
 ” 「ミチオ、アルヴィンが獲ったブラックベアの脂肪だ。パンにつけてみろ!」テーブルにはクロクマ、カリブーの肉、クランベリーのジャムなどが並び、、、、メアリーの焼いたパンを、アルヴィンが獲ったクロクマの脂肪に浸して口に含むと、それはとろけるようなうまさだった。ずっと以前、まだ十代だったアルヴィンと、ブラックベアの冬ごもりの穴を見に行ったある四月の春の日のことを思い出していた。 ”
どんなだろう、クロクマの脂肪に浸されたパンって。 うまい?、、、
メアリーはどんなパンを焼いたのだろう? きっとガチガチだろうな、、、
それでも僕は、クロクマの脂肪に浸したパンを食べられたミチオをうらやましく思う。彼はあの豊かな世界に参加することが許されたのだから。
天然酵母のパンにオーガニックのオリーブオイル、すこしの自然塩、これはおいしい。でも、それだけに終わらないゆたかさって何だろう?
僕の焼くパンにあるだろうか?