鬼の弾く音

今日は音のはなし。
沢井一恵という人の琴を聞きに行った。もう70歳近いのじゃないだろうか、細いほそいからだで鬼気迫まっていた、その弾きっぷりはすごい。 十七弦箏という楽器はかなり大きい、その琴におおいかぶさるようにして彼女は音をだす。つまびき、こすり、ばちばち弦を弾き、両手でバンバン叩き、ときにドラムのような、ときにベースのような、そして不可解な音をだす。
今昔物語集にあり夢枕獏の"陰陽師"にさらりと書かれた"玄象の琵琶、鬼の為に取らるる"を思い出す。
弾く者を選び、まるで生き物のようであったという玄象という琵琶、羅生門で鬼が弾いていたという、、、沢井一恵の演奏はそんな気迫があった。演奏のはじまるときはほんとうに琴に立ち向かうような姿勢で立ち、一曲弾きおわるとふらふらしていた。 そこにある音は、もう彼女が作る音ではなく、彼女と十七弦とその場に"起こってくる音”なんじゃないだろうか。
パン焼きもそうでありたい、プロなんだから。
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28秒だけ聴けるよ、