ラスク時間

ameen2004-01-25

ラスクの手順はこう、まず、前日に焼いて少し乾燥させたパンをごく薄くスライスする。そしてオーブンで空焼き、冷めたら蜂蜜と生姜のシロップを一枚づつぬり、ふたたび焦がさないようにオーブンで焼き上げる。
パン屋の仕事のなかでラスクの位置づけは低い。なんといってもたいした技術はいらないし、残ったパンの二次加工、あってもなくてもいいような、、、空いた時間に済ませるか、発酵したパンたちが焼き上がって、掃除をはじめるのまえにさっさっと片づけてしまうものだ。
そんな地味な作業をひとりでしているときに、よくパン屋だなぁと感じる、誇らしさと云ってもいい。カンパーニュや黒パンを作っているときの緊張したリズムのなかよりもいっそうになのだ。
おれは大地の商人になろう
きのこを売ろう あくまでにがい茶を
色のひとつ足らぬ虹を
こう歌ったのは谷川雁だけど、ラスク作りの単調な作業の静けさのなかに、僕の長い不労の人生のなかでわずかにまことの労働を感じさせてくれるのです。