Lucky Dragon

昨年末にお正月に読む本をまとめて買おうと大きな本屋に行った、児童書の棚を抜けていく途中できれいな表紙の絵本が目に付いた。”絵 ベン・シャーン”とあるじゃないか!
「ここが家だ ベン・シャーンの第五福龍丸」文は日本語で詩を書くアーサー・ビナードさん。
ベン・シャーンは第五福龍丸の連作を描いていたんだ、本の帯には ”この物語を、忘れられることを、じっと待っている人たちがいる” とだけ書かれていた、本文ではこう続く”ひとびとは 原水爆をなくそうと 動きだした。けれど あたらしい原水爆をつくって いつか つかおうとかんがえるひとたちもいる。”  胸の底でちぃっと火が燃える。
僕がベン・シャーンを知ったのは、きっと20歳の誕生日ではなかったかな、 ある人が ”そうか、今日は君の誕生日か” と云って2枚のプリントされた絵をくれた。力強い線で描かれたカンジーと、抱き合ったふたりがやはりペンで描かれた色のない絵だった。 その僕の誕生日をささやかに祝ってくれた六畳二間のアパートは大阪・天王寺で、すぐ近くには大きなスラムがあり、すっかり色褪せた通天閣が立っていて、そのアパートを出ると、すれ違う人たちは、まるでベン・シャーンが描くヨレヨレのコートを着た失業者のような人たちだった。
もちろんベン・シャーンがどんな絵を描いてきたかについて、僕が知るのはもう少しあとになってからなんだけど。
ベン・シャーンはLucky Dragon Seriesの連作について、「放射能病で死亡した無線長は、あなたや私と同じ、ひとりの人間だった。第五福龍丸のシリーズで、彼を描くというよりも、私はみなを描こうとした。」と語ったとこの本の解説に紹介されています。
僕も20歳の頃、すれ違ったヨレヨレのコートを着たおっちゃんたちを忘れないでおこうと思う、あなたや私と同じ、ひとりの人間なのだから。

http://www.shueisha.co.jp/kokoga_ieda/
http://d5f.org/top.htm
http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Stage/6260/alps/zakkicho06.html