パン屋の拍手

「戦争は世界中を大きな音で覆った、だから私は妻のためにこの曲を小さな音で作った。」とジョン・ケージは1944年に”季節はずれのヴァレンタイン”というささやくような美しいピアノ曲を作った。

60年後の今日の朝、イスラエルのカザ、21歳の女の子が自分のからだに爆弾を巻きつけて死んだ、自爆テロ、4人死亡7人負傷。
また、まだ大きな音。
彼女は過激なテロ組織に洗脳され利用されただけなのだろうか? 千歩譲ろう、たとえそうだとしても、どうしてもそこに自分の死と他者の死を決意した彼女が残る。彼女のまわりにあった小さな音、服を着る音、ごはんを作る音、それらが戦車のキャタピラの大きな音で踏みにじられたからじゃないのだろうか?
いったい僕たちに小さな音を聞く耳は残っているだろうか?

せめてパン屋の僕には、パンがじょうずに焼き上がったときにパチパチという皮がはじける音、”パン屋の拍手”がよろこびだ。

あらゆる戦争反対。