大晦日

6歳の友の家の近所にひとりの浮浪者がいる、僕らは彼を”ラッキーさん”と呼んでいる。彼を見かけたら、その日にはなにかラッキーなことがあるよ、そんな遊びが僕らの間にはいつからかできていたんだ。
だって、彼の特別さは他のホームレスの人に比べて際立っていた、地面につかんばかりのドレッド化したたてがみのような髪の毛、ホームどころか決まったテントも寝床もないよう、ホームレスの全財産であろうショッピングバックやゴミ袋なんて背負っていない、そして彼はいつもうっすらと微笑している。
その日、それでも僕は驚いた。彼は道端のごみステーションに積み上げられたごみ袋をクッションに寝そべり肩肘をついて、シケモクをゆっくりとくもらせていたんだ。ラッキーさん、、、
犬の哲学者と呼ばれたディオゲネスは、裸で川辺に暮らしアレキサンダー王にうらやましがられた、古来、マスターと呼ばれる人たちは乞食の姿でやってくるのが好きだ、いたずらな顔をして、あくせく夢を追いかけている僕たちに足払いをかけていくのだ。
どうして、ラッキーさんがそうでないといえよう!

晦日の夜は、そんな不思議なことが起こりやすい。よい年をお迎えください。