雪虫

北海道のお客様から雪虫が飛んで、今にも雪が降ってきそうなくらい、、、とメールをいただいた。 雪虫のことをはじめて知ったのは、10代最後の夏から冬が始るまでの数ヶ月を過ごした阿寒湖畔。 大阪の街育ちの僕には秋の道東の自然はあまりに美しく生まれてはじめて自然は美しく圧倒的な力をもった存在なのだと、知ったのもこのときだった。
夏が終わり、山々が紅葉して、見上げる雌阿寒岳が白くなり、阿寒湖畔のアイヌ部落に密漁の秋鮭を車のトランクに入れて売るにくる者が現れたり、ある夜は村の仲間とひどく酔っ払い顰蹙をかい、日々の夜はだるまストーブの前で干した氷下魚コマイをちぎりちぎりして友と過ごしたりした、僕はそうしてひとつひとつ自分で生きることを学び、子供時代を終えていったように思う。
雪虫が飛んで、雪が降り、雪がつもりつもり、 ”ここでこの冬を越えたら一人前の男になるさぁ” と言われたけれど、僕はその冬を過ごしきれず、一人前の男にはなれなかった。



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